男は、家庭訪問に現れなくなった。堀田からの連絡で、男が入院していることを知りました。かなりの重症らしい。脊髄を損傷して、車イスで移動しているらしいが、立って歩けるようになるには、長期間のリハビリが必要らしい。
学校、剣道道場でも大きな話題になった。あの立派な先生が、酔っ払って非常階段から転落したと、動揺する人が少なくなかった。私の息子、健太もその一人だ。
あの男は、私と堀田のことは口にしていない。自分ひとりでやった過失という事になっている。私の家に、平穏な日常が戻ってきました。
日常は平穏だが・・・なんだこの、ぐじゃぐじゃに絡まりあって整理しきれない苛立ちは。何が起こっていたんだ・・・。
堀田は、金をゆすり続けるあの男の処分を私に押し付けようとしていた。恩人であり、ゆすり魔である男に、葛藤していた。
あの男、峰垣は、調査費の為に教え子をゆすってまでして、家を出た夫人の日常を興信所に調べさせていた。それほど未練がありながら、なぜ追いかけなかったのだろうか?厳格な男のプライドなのか?戻ってきてくれと言えないはけ口を、私の妻に向けたのか?私の妻の肉体をむさぼり奪い続けることで、本当に必要な夫人の存在を忘れようとしていたのか。
愚かな男だ。忘れる事が出来るわけがないだろう。愛するパートナーを、忘れることなんて。可哀想な男だ・・・。
可哀想な男・・・。妻は、男の事情を知らなくても、そんな匂いを自分の父親と重ね合わせてしまっていたのか?家族の愛を受けられずに、放蕩していた父親と、夫人に捨てられた男。
私を助けるために、肉体を男に捧げたのは、そうに違いない。最初はそうに違いない。それから、男に哀れなほどの影を見つけ、言いなりな献身を奉仕していたのか?しかし妻は、同時に、女として目覚めていっていた。私はそれを目の当たりにした。
男の猛々しさ、手練手管、持続力に、悶え喘ぎ、男と絡み合い、性器をむさぼり合い、絶叫し、歓喜していた。最後の家庭訪問で見た、妻の腰を振りまくり、男をも圧倒していた姿は、女の淫乱な開花の姿として、私の脳裏に焼きついてしまっている。
妻の肉体を開花させた男・・・私はその男と戦って勝った。勝って妻の元に戻った。妻を取り戻した。本当に、そうなのだろうか・・・?
「あなた、もう下げていい?」
「ああ、ご馳走さま。美味しかったよ」
平穏な日々のある夜、夕食後、私は妻と向き合いました。私に呼ばれた妻は、少し怯えていた。
「な、何?は、話って・・・」
「実は、今の仕事を辞めようと思っているんだ」
「ええっ?」
妻が、肉体を犠牲にしてまで守ろうとしてくれた、私の立場。私はそれを、捨て去りたかった。そうでもしないと、頭にこびりついた、妻の躍動する白い肉体が消せないと思ったのだ。
「そんな、いきなり・・・」
「もう、決めたんだ」
「辞めて、どうするの?それから・・・」
「まだ判らない。しばらく、何もしたくないんだ。ゆっくり、旅でもしてもいいと思っている」
「・・・・・・」
妻が青ざめて、うつむきました。唇を噛んでいる。怒りのように見えました。突然、顔を上げ、
「馬鹿っ!!」
と叫んで、立ち上がって、出て行ってしまったのです。せっかく私が守ったものを・・・そう思っているのだろうか?・・・でも、仕方ないじゃないか・・・
翌朝未明、私は隣のベッドで寝る妻を起こさないように、そっと起き上がり、寝室を出て、かばん一つで家を出ました。そっと。
振り返らずにバス停に行き、始発に乗り込んだ。辞表は、帰ってから出せばいいだろう。どこか、行った事のない所へしばらく行くのだ。だが、こんな事をしても、無意味だ。虚しいだけだ。でもどうしようもない。駅に向かうバスの中で、私はそう思っていました。
そんな私の虚しい灰色の壁を蹴飛ばし突き破ったのは、妻だったのです。私の妻だったのです。
バスの左側の車線を、物凄いスピードでタクシーが追い越していきました。私は何気なくそれをみていました。そしてしばらくすると、バスがクラクションを鳴らして、急ブレーキを踏んだのです。まばらな車内。もし立っている乗客がいれば、吹き飛んでいたでしょう。
「何やってんだっ、あんたっ!!危ないだろうっ!!」
運転手が窓から顔を出し、叫んでいる。乗降口の扉が、ドンッドンッと激しい音を立てていました。誰かが叩いているのか?車内が騒然としました。プシューと扉が開きました。
「おいっ!ふざけるなよ、あんたっ!いったい・・・うわっ!」
私は愕然としました。バスに勢いよく乗り込んできたのは、妻だったのです。腹を立て立ち上がろうとした運転手を、妻はバックを振り回してひるませると、私の元に走ってきました。目が釣りあがって必死の形相でした。
「あなたっ!!降りてっ!お願いっ!!来てっ!!」
妻は私の手をとり、逃げるように走りました。走り続け、止まった時、私の襟首をつかんできたのです。
「どうしてようっ!?あなたっ!!」
「・・・・・・」
「何で出ていくのようっ!!」
「しょうがないんだっ!」
「来てっ!!」
妻は私を、建物の中に押し込みました。そこはラブホテルだった。私たちはホテル街に入り込んでいたのです。妻は小さな窓から鍵を受け取り、私をエレベーターに押し込んだ。エレベーターを降りてランプの点灯する番号の部屋に私を突き入れると、また叫びました。
「私を一人にしないでようっ!あなたがいないと、生きていけないっ!何もいらないっ!あんな家なんか要らないからっ!あなただけは何処にも行かないでっ!父みたいになりたくないっ!なりたくないのぉっ!あの男みたいにぃっ!!」
「!!!」
妻が私に、あの男のことを口にした。無意識に違いないが、口にした。血が沸騰しました。妻の歓喜する肉体がよみがえり、激しく嫉妬が燃え上がりました。男との死闘で吠えていた私の内の野獣が、今度は妻に向かって吠えました。
「うおおっ!」
「あなたぁっ!」
私は妻をベッドになぎ倒し、妻を転がしながら服を脱がせました。ブラジャーを剥ぎ取り、パンティ-をむしり取りました。白く美しく柔らかい乳房につかみかかり、イチゴ色の乳首に噛み付きました。
「あはあっ!あなたぁっ!」
「お前は俺の妻だぁっ!しゃぶれぇっ!」
「あなたぁっ・・・うぷうっ・・・」
妻を抱き起こし、唇に勃起をねじ込みました。喉に向かって腰を振りたてる。妻は涙を流し涎を垂らしながら、それに応じる。
「お前は俺の妻だっ!判るかっ!」
「うぷっ・・・はぷっ・・・くぷうっ・・・」
妻は、私の勃起を咥えながら、頭をコクリコクリと振り、わかっていますわかっていますと、意思を示す。激しくフェラチオしながら、目を私から反らさない。
「ぷっはあ・・・あなたぁ・・むぷう・・・」
「出るぅっ!」
「むふうっ!」
妻のすぼまる頬の中で、ドクドクとはじける私の勃起を、妻は吸い続ける。目を反らさない私と妻。私の精をごくりと飲み込んだ妻は、私を呼びながら私の腰にしがみついてきました。
「あなた・・はあは・・・あなた・・・はあはあ・・・あなたぁ・・・」
「うおおっ」
妻を押し倒し、腿を思いきり開き、濡れた妻の女性部にむさぼりつく。舐めまわし、クリトリスを吸い尽くす。
「うはあっ!あなたの妻ですからぁっ!あふうっ・・・お好きなところを使って下さいぃっ!うふうんっ・・・前でもぉっ、後ろでもぉっ・・・前でもっ、お尻でもぉっ・・・はうんっ」
「いくぞぉっ!」
「あなたぁっ!」
私は恐ろしい復活力を見せる勃起を、妻の膣に当てがい、一気に押し込みました。
「うんふうっ!」
のけぞる妻を突きたて、抜いた。そして今度は、アナルに当てがう。妻の愛液で濡れた亀頭で、可憐なすぼまりを押し開く。貫く。
「ひいぃっ!あなたぁっ!ひいいぃっ!」
妻の直腸を奥まで貫いた私は、膣の中にも指を突っ込みました。捩れるように締まるアナル。ひくつく様に締まる膣。クリトリスを圧迫した時、妻が吠えました。
「もう駄目ぇっ!こんなの初めてぇっ!イッちゃうっ!お尻でイッちゃうっ!」
ブシュウッ!
膣から指を抜くと、妻は潮噴きしました。ぶしゅぶしゅと噴出す淫水。ギュウウッ・・・とアナルから私の勃起が押し出されたのです。恐ろしい収縮。私は抜けた勃起を、間髪いれず膣に貫き入れました。
「ひぐうぅっ!あなたぁっ!壊れちゃうっ・・・壊してぇっ・・・あなたぁっ」
あなた、あなた、あなた・・・妻は髪を振り乱し、爪をつきたて、何度も私を呼びました。あなた、あなた、あなた・・・
「あなたぁぁっ!!」
そうだ、私たちは夫婦だ。壁の大きな鏡に、私と妻が映っていました。凄まじい性交だ。私がのぞき見続けた、家庭訪問のあの男と妻の性交以上の凄まじさだ。躍動と迫力では敵わないだろう。でも根本的に違う。夫婦のセックスの凄まじさだ。あの男では決して作れなかった凄まじさ。
あなた、あなた、あなた・・・妻が口に出す言葉が、私の中に入り、夫として燃え勃起し持続しました。妻の手を握り締め、指を絡め、腰を打ち続けました。妻と目を合わせ続け、確認しながら腰を振り、締め付けあいました。夫婦なんだ。絶対に離さない。何処にも行かない。
「あなたイッちゃぅっ!!」
「うぬうぅっ!」
私と妻は、並んで手をつないで仰向けになり、天井を見ていました。どのくらいそうしていたでしょうか。私はむしょうに我が家に帰りたくなったのです。
妻は、男との関係を、私が知っていると思っているのだろうか?逆に、男の負傷に、私が関係していることを感づいているのか?
「あなた・・・私、帰りたいわ・・・」
妻がそう言って起き上がりました。怖い。妻を失うのが。何も聞くまい、言うまい。それが間違っていても、怖いんだ。妻もそう思っているからこそ。私と妻は激しく愛しあえる。破綻の扉をこじ開けてもしょうがないじゃないか。私は起き上がり、妻に言いました。
「帰ろう、家に」
「はい、あなた・・・」
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